京都社会フォーラムの呼びかけ文
地域の暮らしと世界の問題
現在、年金や保険といった社会制度のあり方に関心が集まっています。また、フリーターの増加や企業倫理の崩壊といった問題が、経済構造の変化とともに顕著になってきました。しかし、こうしたことについて一般の市民が十分に議論を交わす場所はなかなか見つけられないのが現状ではないでしょうか?
一見とてもローカルな問題にみえるこうした問題も実は、単に日本だけではなく、国際的な経済システムの変化によって顕れてきたと言えます。地球温暖化や森林破壊といった環境問題と同様、年金のような身近な経済の問題についても、全世界で同時に同じような問題が起こっています。例えばフランスでもブラジルでもインドでも、形は少しずつ異なりますが、社会保障や公共サービスを巡って同様の問題が発生しているのです。こうした問題について世界中から人々が集まって現状を共有し、知恵を出し合おうというのが「社会フォーラム」という運動です。
「社会フォーラム」とは?
2004 年の「第4 回世界社会フォーラム」は、インドのムンバイで全世界から集まった市民やNGOのほか、著名な学者や政治家など、10万人以上の参加者を集めて開催されました。
「社会フォーラム」とは、食や環境、戦争と平和、人権、女性、労働、農業、経済など、さまざまな課題に取り組むNGO やグループ、個人が集まって、グローバル化とのかかわりという視点から、これらさまざまな課題について討論し、持続可能な「もうひとつの世界」をつくりだすための対案を提示していこうという運動です。
2000 年1 月にブラジルのポルト・アレグレで始まった「世界社会フォーラム」は、今年で第4 回を数えました。最近では、大陸レベルの「ヨーロッパ社会フォーラム」や「アジア社会フォーラム」をはじめとして、国レベルや都市レベルの社会フォーラムも行われるようになってきました。我々はこの社会フォーラムを、日本で初めて、京都で行うことを提唱します。
京都社会フォーラムの3つの目的
京都で日本初の社会フォーラムを開くにあたって、3つの大きな目的があげられます。
まず、各国ですでに行われている都市フォーラムと同様、京都というローカルな場に、グローバルに進行するさまざまな問題が反映されていることを見いだし、そのことに対応するために共通の課題を探っていくことです。
第二に、日本で初めて行われる社会フォーラムとして、日本全国のNGO や市民運動、個人の、問題関心や立場を超えたネットワークづくりの場を提供します。社会フォーラムの本来の目的はこうした場の構築ですが、日本各地にその場が形成されるための先駆けを努めます。
第三に、社会フォーラムという場を造りだすことによって、世界の情報を日本に伝え、また日本からの情報を世界に伝えることで、新しい協力のネットワークを誕生させることに貢献します。
グローバル化と京都
経済効率を最優先にし、均質な経済環境を求める、いわゆる「グローバル化」の歪みは、南北問題や地球環境問題のような大きなレベルだけでなく、企業の収益増、国際競争力強化のためのリストラや工場の海外流出による雇用喪失、産業空洞化など、私たちの足もとの地域・自治体にもあらわれています。私たちの暮らすこの京都も例外ではありません。
一方、財政危機や法人税の軽減を理由にした公共料金の値上げ、企業活動を活発化させるための地域の実情を無視した規制緩和といった措置が、自然環境、安心な暮らし、教育や医療の質といった経済的な指標では計り難い価値を切り捨てようとしています。
また、経済的効率を何よりも重視する現在の経済のあり方は、各地域の文化的独自性を破壊し、個性のない都市にしていきます。歴史文化都市であり観光都市である京都にとって、それはとくに深刻な意味を持っているといえるでしょう。
「もうひとつの世界」へ京都から発信しよう
世界各地で、このような流れに対して生活を守るための、市民による様々な取り組みがはじまっています。京都にも存在するさまざまな取り組みをつなぎあわせ、ひとつの大きな動きにしていくこと。そうすることによって、誰もが安心して住みつづけられる持続可能な「もうひとつの京都」を創造することができるはずです。それはまた、平和、人権、民主主義を大切にする「もうひとつの世界」の創造にむけたメッセージを、この京都から世界に発信することにもつながります。
希望ある地域と日本、そして世界の未来を取り戻す。その創造的な試みをこの京都から始めましょう。そのために、さまざまな課題に取り組む個人・NGO・グループが横のつながりを強め、お互いの問題意識と知識や経験をわかちあい、討論をすすめていく場として、2004 年12 月に「京都社会フォーラム」を開催することを、我々は提案します。
京都社会フォーラム実行委員会
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